サワフタギと電車虫

雨の合間に庭に出た。サワフタギの花が満開だった。薄暗い藪の中で、繊細な白い花がよく目立つ。近づいたら、いた!いた! 僕の好きな「ホタルガ」の幼虫が食事をしていた。成虫も美しいが、幼虫も赤と黒と黄色で飾って、なかなか美しい。子供達は、この背中の黄色い斑が、夜の電車の窓から漏れる灯りのようだとして「電車虫」と呼んでいる。猫バスの窓のようだと「猫バス虫」とも言っている。サワフタギは、この後、宝石のような美しいブルーの実を付ける。

岩間町の散歩

 笠間市のJR岩間駅に行った。ここは思い出深いところだ。まだ、僕がまだ20代だった頃(50年前)、幼い息子と電車に乗って、この駅に降り立った。当時柏に住んでいたのだが、休日に東京方面に向かう気がしなくて、下り電車に乗ってこの駅まで来たのだ。幼い息子が木造の小さな駅舎の改札口で写っている写真が今でもある。思い出すと、甘酸っぱい懐かしい気持ちになる。それに、駅から歩いて山に登れるのは、常磐線ではこの岩間駅が最も近い。

JR岩間駅

 それが、今日行って見ると、駅舎はすっかり変わっていた。近代的な2階建てのコンクリート作りになっている。駅周辺の店舗や家並みもすっかり変わっていた。駅前の食堂も本屋も今では無いし、旅館もお洒落なカフェになっていた。でも、何処となく町の雰囲気は変わっていない。静かなゆったりとした時間が、街全体に流れている。駅からのメインとなる道路の先に愛宕山が鎮座している。まるで、愛宕神社の参道のようである。僕は、この雰囲気が好きである。一層感傷的な気分を増幅させる。

正面が愛宕山

 歩いて、喉が渇いたので、昔、旅館だった『橋本焙煎所』に入った。ここは、つい先日、開店したばかりだ。まだ、時間が早くて閉まっていたが、ちょうど居合わせたオーナーの奥さんと息子が、僕のために店を開けてくれた。店内は、どこもかしこも真新しく、デザインが素晴らしい。新品の焙煎機とピカピカのエスプレッソマシンが置いてある。イケメンの息子が淹れてくれたコーヒーを飲みながら、3人であれこれお喋りを楽しんだ。僕の好きな落ち着いた街に、カッコいいカフェとコーヒー豆店が出現したのがたまらなく嬉しい!もう少しすればエスプレッソも飲める!

橋本焙煎所

水辺の家

 昨夜、夢を見た。海岸か湖近くの高台に建っている家に住むことになった。朝早くから陽が当たって、一日中明るく暖かい。目の前には、水面が広々と広がっている。妻もここなら気持ち良く暮らせそうだと言う。ずうっと、水辺の家に住みたいと思っていたから、こんな夢を見たのだろう。

 目覚めて、まだぼんやりしている頭で、夢の場所はどこだろうかと考えた。いつも行く鹿島灘か?霞ヶ浦の玉里周辺だろうか?それとも出島か?行方方面だろうか?・・早速、それらしい場所を探しに行くことにした。ウロウロしたあげく、とうとう麻生まで来てしまった。麻生町は、霞ヶ浦の南東の先端にあり、海と繋がる河口の近くに位置している。潮来や鹿島に近い。木々の茂った丘陵が湖岸近くにせまっている美しい町だ。この小さな町には、鎌倉時代に常陸大掾氏の一族 行方忠幹の孫、家幹(いえもと)が築いた麻生城があった。今、城址は「羽黒山公園」となってる。この公園に上れば、霞ヶ浦を一望できるかもしれないと期待して訪れた。

小高いところにある公園は、シイノキやタブノキの巨木に囲まれて鬱蒼としている。訪れている人影はない。中央の管理事務所も閉まったままだ。庭や広場は黄色や白い花の雑草が一面に繁茂している。静かだ!城跡の縁まで行き、黒々とした椎の間から遠くを眺めたら、霞ヶ浦の水面が白くキラキラと光っている。手前の家並みも情緒がある。夢の中の風景のようだ。


 毎日、朝起きてこの風景を眺めて暮らすことが出来たらどんなに幸せだろう。・・・・・
どうやら、まだ完全に目が覚めていないらしい(笑)

タブノキの新葉

西明寺の友達

益子の西明寺の本堂に上る石段の脇に座っている小さな石仏たちは、僕の古くからの友達だ。いつも、ここを訪れる度に、必ず彼らに挨拶する。「どう、みな元気にしてた?」「子供は、大きくなったかい?」。仲の良い二人と赤子を抱いたお母さん、そして優しい表情のお地蔵さん。いつ会っても、ニコニコと笑顔で迎えてくれる。皆が、たまらなく可愛い。彼らに会うと、心が暖かくなる。

益子の『雨巻茶屋』

何年か前、雨巻山に登って下ったら麓にカフェがあって、カラカラに乾いた喉を潤した。こんな奥地のカフェなんて、そう長く続くことは無いだろうと、その時は思った。
今日、西明寺の帰り、ふと思い立って訪れた。両側を山に挟まれた細長い谷地を奥へ奥へと車を走らせると、そのカフェは健在だった。

この道の突き当たりの山麓に店がある

 それも、以前にも増して店舗は大きくなっていた。店内に入ると、ジャズが流れていて、とても山奥の店とは思えない。しばらく、コーヒーを飲んでいたら、ひっきりなしに客が入って来る。若い女性のグループや雨巻山の登山者のようだ。店員の女性に「入り口の看板がCLOSEになっていたよ」と言ったら、「今日は朝から忙しくてOPENにするのを忘れてた」と。驚いた!

僕は、よく西明寺を訪れる。その帰りに寄り道するのには絶好の場所だ。一本だけ脇道にそれて田舎道を走って行くだけで、日常とは異質な時間を過ごせる。山の緑を眺めながら、ゆったりと食事ができる。(コーヒーがもう少し美味ければ完璧なのだが・・・)

振り返れば雨巻山

筑波山に登る

カタクリは、ほとんどが咲き終わって実になっていた。ブナは芽吹いたばかり。アカシデ、イタヤカエデ、ヤマツツジの新緑が瑞々しい。

遠く加波山
防火帯
左、真壁町

新緑の海

笠間の「北山公園」へ行って、展望塔に登った。ここまで来る人は少ない。360度見渡せる空中デッキは僕が独り占めだ。手すりに寄りかかって、はるか遠くまで広がる森の新緑を楽しんだ。時折、心地良い風が吹く。次回は、ここでお湯を沸かしてコーヒーを淹れよう!

北 (日立) 方面
南 (石岡) 方面
東(水戸)方面
西(笠間) 方面

帰りは、近くの「笠間芸術の丘公園」内にある「陶芸美術館」に寄って、フィンランド・グラスアート展を見てきた。まだ山桜が残る日本の森から北欧の針葉樹の森への移動だ。恵まれている所に住んでいるものだ。1、2時間もすれば、美しい世界を渡り歩ける。ムーミン家族にも会ってきた。

三仙人の「お茶会」

 昨日は、彫刻家のM氏宅でおじさん3人の「お茶会」だった。午後1時から始まり、お開きは午後9時と延々8時間。それでも話題は尽きない。次回の開催を約束してお開きとなった。もちろん、お茶会だから、飲みものはコーヒーとお茶だけのノンアルコール。つまみは、和菓子とM氏コレクションの石ころだけ。長丁場になったので、奥さんが料理を差し入れてくれた。美味かった!楽しかったな〜。何を話していたかって?それは秘密(笑)。

涸沼にて

 いつものように、茨城町で昼食をとった後、大いに道草して涸沼に行った。水辺で、食後のコーヒーが飲みたかったのだ。そこで水戸八景の「広浦公園」に行った。ここは海水が涸沼へ流れ込む入り口近くにある。湖岸に沿って細長い松林と釣り宿が並んでいて、どことなく田舎の漁師町の雰囲気がある。

 今頃の公園は誰もいない。ベンチに座って、湯を沸かし持って行ったブラジルショコラの豆をドリップして、湖面を眺めながらチビリチビリと味わっていた。その時、誰もいないと思っていた湖面に人影が現れた。大きな三角網で何かをすくっている。近づいたので、「アサリを採っているのですか?」と声をかけた。年配の女性だった。彼女は何も言わず、僕に近づくなり透明な細長い小魚を手のひらに乗せてくれた。シラウオだ。ガラス細工のような魚体が手のひらの上で跳ねる。解禁になったので漁に来たのだけど、風が弱くてあまり獲れないという。風が強ければ強いほど、シラウオは風下の岸近くに吹き寄せられる。しばらくして、彼女は陸に上がってしまった。

 帰ろうとして、旅館風の建物の前まできたら、若い女性がアサリを洗っていた。涸沼のアサリは大粒で名物だ。眺めていたら、そこの女主人らしいおばあちゃんが、「写真を撮るならここからの夕陽がすごく綺麗だから夕方に来たらいい」という。以前、誰かが写した写真があるから見せると言って部屋に駆け込んだ。しかし、見つからなくて代わりにご主人の写真集を持ってきた。茨城町のPRに使われたものだそうだ。PR写真に取り上げられただけに、主人の赤茶けた肌の漁師姿が実にカッコいい。涸沼や漁のことは何でも知っていて、誰にでも親切に話したそうだ。でも、昨年、71歳の若さで亡くなってしまったという。生きていたら、もっといろいろなことを教えてやれたのにと残念がっていた。

 話題は、亡くなった主人のことから、料理の話に移り、この辺は汽水域なので海の魚と淡水の魚の両方が獲れる。ヒラメやボラ、ハゼ、ウナギ、ワカサギやシラウオなどいろいろな魚が食べられるという。シーズンになると、遠くから多くの釣り人が集まるそうだ。次のウナギのシーズンには是非来るようにと言われた。天然物のウナギを白焼きして軽く塩をまぶして食べるのが最も美味いそうだ。そして、まもなく旬になるシラウオは、生姜や刻んだ青じそを乗せて醤油を少し垂らして食べる刺身が一番うまい。また、ご飯に混ぜて炊いてもいい。何と言っても、新鮮なシラウオの天ぷらは絶品だと。4月末から五月の強い南風が浜に吹き寄せる日に、着替えと凍らせたペットボトルを持ってまた来なさい。そうしたら、宿の網を貸してあげるからと。ひとすくいで2、3十匹獲れることもあるという。ここまで言われたら、行かない訳にはいかないだろう(笑)。(但し漁業権に注意)

 これだから、一人の散歩は楽しい!生きているのもまんざらじゃないと思える(笑)。