大山桜が倒れた!

一昨日、流山の自宅に帰っている時に、突然、「上青柳の大山桜」が根元から倒れたとの連絡があった。驚いた!今年の春に見事な花を咲かしていたのに信じられない。満開の花の下で、皆んなで楽しく食事をしたのを思い出したら、一層悲しくなった。

八郷に戻って、小屋に行くよりも先に大山桜を見に行った。高さ25m、周囲4mもある大木が、谷の方向に哀れな姿で横たわっていた。この山桜は、僕が八郷に来て以来、約二十年間、毎年見ていた。何度も観察会も開いた。木の下で子供たちと遊んだ。

この桜は、竹やぶに囲まれて育ったせいか樹高が高い。生えている場所も土壌が薄く、岩盤があって深く根を張れなかったのかも知れない。木の大きさの割りには、根張りが貧弱である。また、一見、樹勢は旺盛なように見えたが、腐敗が入っていた。先日の台風には耐えられなかったのだろう。

2023年4月2日 最後の花姿

長い間、美しい桜を咲かせてくれてありがとう。「さようなら!」

 

 

蓮田の中のカフェ

お盆が近いからではないが、以前のブログにも書いたように、僕は蓮(ハス)という植物が好きだ。霞ヶ浦の湖岸道路を走っていて、見渡す限りの蓮田の中に、埋もれるようにして一軒の家があるのを見つけた。壁には、「珈琲」の文字が書いてある。蓮も、コーヒーも、そして一軒家も好きな僕は、このようなカフェに強く惹きつけられる。寄らないわけにはいかない。店に入ったら、客は僕一人だけ。蓮田が臨める一番いい席に座ってコーヒーを飲んだ。

風が、深い緑の大きなハスの葉を揺らす。時々、白い葉裏が見える。もう、花の最盛期は過ぎたのだろうか、咲いているのは幾つも無かった。それを気遣ってくれているのか、店内には朝切り取ってきたピンクと白の花が活けてあった。真っ青な夏空に積乱雲がゆったりと流れている。

風で揺れるハスの群れを眺めているうちに、次第にゆったりとした気分になって、いつの間にか居眠りしてしまった。残念ながら、極楽浄土に行った夢は見なかったが・・・・・。

 

ハスの花

こう毎日暑くては、水の近くに行きたくなる(笑)。そこで霞ヶ浦の湖畔に行った。あちこちに蓮田が広がっている。ちょうど今頃は花の季節。大きな白やピンクの花が、鮮やかな緑の葉の中のあちこちに首を出している。車を止めて写真を撮ろうとしたが、多くが閉じている。そのはずである。ハスの花は、早朝に開花して昼頃には閉じるのだ。

それにしても、何度見ても見事な美しさだ。ヒンドウー教や仏教などの世界の宗教で「聖なるもの」の象徴としているのがよく解る。それに、花も実も葉も根も、植物体のすべてが食べられる。見て美しく、食べて美味しい。加えて「アリガタイ」。こんな完璧な植物は他に無いのではないかと思う。

 

ノカンゾウ(野萱草)

近くの田んぼの畦道に、ノカンゾウの花が咲いていた。この辺で良く見かけるのはヤブカンゾウだが、これは一重の花弁である。間違いなくノカンゾウだ。こんなに大きな群落が、小屋のすぐ近くにあったなんて、これまで気が付かなかった。山と畔草の深い緑、そして、だいぶ成長した田んぼの稲の中で、濃いオレンジの花が良く目立つ。八重のヤブカンゾウより少し後から咲く。別名はワスレグサ(忘草)。どうして、そんな名前なのかは知らない。

ノカンゾウ

この草は、春の出立ての若芽も美味しいが、今頃の花を摘んで甘酢漬けしたものは色鮮やかで美味しい。薬効もある。

ヤマモモ

鉾田の知人の家を訪ねたら、庭に踏み入るなり異様な匂いがする。ヤマモモの果実が、地面一面に落ちている。それが臭うのだ。その上には、高さ数メートルにもなるヤマモモの木が茂っている。見上げると、濃緑の広い葉に隠れるようにして、真っ赤な果実がたくさん付いていた。このヤマモモの実は、生食ができて、甘酸っぱく、独特の風味がある。ジャムや果樹酒などにも利用される。ヤマモモは、バラ科の「桃」とは全く異なった仲間で、ヤマモモ目ヤマモモ科の樹木である。温暖な地方に生育し、分布は南関東(房総半島南部、福井県以西)の本州、四国、九州、沖縄である。味にも甘いのや、ヤニっぽいのや、いろいろがあるらしい。山口県の友人は、子供の頃、山の中で味の良いヤマモモの木を探すのが遊びで、見つけた甘いヤマモモの木は、自分だけの秘密にしたと言っていた。

友人に聞いたら、以前はジャムに加工したが、種子を取るのが面倒で、最近はもっぱらハクビシンの餌になっていると言う。市中で見かけないのは、この果実はすぐ痛んで保存ができないからである。丈夫な木なので、最近は公園や街路樹などに植えられている。もしかすると近くで実が付いている木があるかもしれない。今が旬である。

ヤマユリが咲いた

ついに、北側斜面のヤマユリが咲いた。昨日まで大きな蕾だったのに、今朝見たら、大きな花が3つも咲いていた。このヤマユリは、毎年、ここで必ず咲いてくれる。そして次々と新しい株が増える。近づいて、大きな花弁を覗き込むと、赤い斑点が夜空の星のよう。じっと、見つめていると奥へ奥へと誘い込まれる。虫になった気分。

それにしても、こんな花が、誰かに植えられた訳でもなく、人知れず林の中で咲いているなんて、奇跡のように思える。

ヒメコウゾとカジノキ

 

ヒメコウゾ

すごい!3日連続して投稿する。今日は、クワ科コウゾ属のヒメコウゾ(姫楮)だ。庭に出たら、真っ赤な宝石のようなヒメコウゾの実が目についた。この実は見るからに美味しそうだ。その通り、甘くてジューシーではあるが、食べると舌にザラッとしたものが残る。これさえなければ良いのだが残念である。毒ではないので、林縁などで見つけたら、ぜひ試食して欲しい。

和紙の原料となるコウゾ(楮)は、この木とカジノキ(梶の木)の雑種である。以前、ちょうど今頃の季節、お茶をやっている人から、カジノキの葉を採ってきて欲しいと言われたが、これには困った。日本では中部地方以西にしか分布していないのだ。カジノキは樹高も葉もヒメコウゾよりずうっと大きく、茶道では夏の時期に、葉を水指の蓋として「葉蓋点前」に使う。この木は、古代から神に捧げる神木として神聖視されてきたから縁起をかついだ風習なのだろう。仕方なく、ヒメコウゾの出来るだけ大きな葉を探して持って行ったが使ってくれたかどうかわからない。

藪萱草

近所の草地を流れる小川の脇に、ヤブカンゾウの花が咲いていた。草の緑の中で、オレンジ色がよく目立つ。この花とノウゼンカズラの花を見かけると、「いよいよ夏だな」と思う。ギラギラした陽射し、青い空に浮かぶ真っ白な積乱雲。それに濃いオレンジ色の花は真夏のイメージだ。これとよく似たのにノカンゾウがあるが、判別は簡単だ。八重の花がヤブカンゾウ、一重のがノカンゾウ。さて、近所に咲いているのは、どっちかな?

ヤブカンゾウ

 

梅雨の晴れ間

昨日は、定例の筑波山観察会だった。梅雨の晴れ間の気持ち良い天気だった。この季節、咲いている花は少ない。それでも、ヤマアジサイやノリウツギなどの白い花が、深い緑の陰でひっそりと咲いていた。

ヤマアジサイ

山頂付近では気温が低いせいか、今がウツギの花盛り。そこに、様々な蝶や蜂たちが蜜を求めて訪れていた。その中にアサギマダラの姿を見つけた。この蝶は、南から北へ往復して旅するので有名であり、大型でフワフワとゆったり飛ぶ姿がたいへん美しい。羽根を広げたところを撮影したかったが、なかなか僕の言うことを聞いてくれない。アサギ(浅葱)の名前の由来となった半透明の薄い青緑色の内側が見たかったのに。

ウツギの花とアサギマダラ

 

マタタビの季節

笠間からの帰り道、道祖神峠を越えて八郷盆地に入った。峠道の両側の林には、マタタビが繁っているところが何箇所もあった。葉の半分ほど白くなっている蔓が、木立のかなりの高さまで登っている。今の季節、葉が白くなっているからマタタビだと容易に判るが、この季節以外だと見つけるのが難しい。もうしばらくすると、この白い部分も通常の緑に戻ってしまう。

車を止めて近づいたら、葉の陰に、白い小さな花が咲いるのを見つけた。今の開花の時期だけ葉っぱが白くなるのは、花粉を運んでくれる昆虫たちに、「この奥に蜜のでる花が咲いているよ」、と知らせているのだろう。葉の下で隠れるように咲いているのは、梅雨の雨で濡れるのを避けているのだろうか。うまくできた仕組みだ。

よく見ると、奥に白い花が咲いている

筑波山を歩いて

定例の筑波山自然観察会に参加してきた。春の花が終わり、夏の花はこれからだ。濃くなった緑の下に山道が続く。時々、目に付くのは白い花。ヒメウツギ、モリイバラの清楚な花が美しい。キビタキ、ヤブサメ、クロツグミが囀っていた。

(写真をクリックすると大きくなります)

自然研究路
ヒメウツギ
モリイバラ
ツリバナ

昨年の筑波山は、ここ二十年来のブナの豊作年だった。地面にブナの実の殻がかたまって落ちていた。数年前から山頂部のスズタケが一斉に枯れて、地面がむき出しになっている。ブナが芽生えるチャンスだ!どこかに実生苗が生えていないだろうかと探して、ついに見つけた。まだ、双葉が残っているブナの赤ちゃんが落ち葉の間から顔を出していた。無事に大きく育って欲しい!そして、大木になって欲しい。

ブナの殻
ブナの幼木

 

エゴノキの花

先日のハクウンボクに続いて、今、エゴノキが花盛りだ。道に白い花がたくさん落ちていて、ここにエゴノキがあったのを知る。早朝、オオルリが鳴いていた。

小屋入口の坂

オガタマが香る

 小屋の入口付近には三本のオガタマの木が植わっている。二本はカラタネオガタマ、もう一本は花弁が赤いポートワインという園芸種だ。庭に出ると、辺りからバナナのような南国のフルーツの匂いがする。甘い官能的な香りと言ってもいい。

カラタネオガタマ

 在来種のオガタマノキは、日本で自生する唯一の常緑のモクレン科の樹木である。オガタマは、「招霊(おきたま)」が転じたもので、日本神道では神聖な木とされ、よく神社などに植えられている。何でも、日本神話で天照大神が天岩戸に隠れてしまったとき、天鈿女命がこの木の枝を手に持って、裸で天岩戸の前で舞ったとされている。天照大神が岩戸を開けてしまったのは、きっと、この木の官能的な香りと外の愉しげな騒ぎに誘われたのに違いない。よく似ているヒサカキの花は悪臭である。ヒサカキでは成功しなかっただろう(笑)。でも、榊といい、この招霊木といい、厚手の常緑広葉樹は、よく神道などで「神聖な木」とされている。これには、深い意味がありそうだ。

 実は、誰もがこの木を身近に目にしている。1円玉のデザインの木は、このオガタマノキだそうだ。改めて1円玉をじっくりと見つめてみたらどうだろうか?

恐ろしや「ツタウルシ」

 夕方、いつものように集落をぐるりと散歩していたら、道脇の杉林でツタウルシが何本もの木に絡みついているのを見つけた。花も付いていた。このツタウルシは、ウルシの仲間で、カブレを引き起こす成分を最も多く持っている。凶悪である。僕の友人は、伐採の作業しているとき、この植物に触れて入院までした。しかし、秋の紅葉は息を呑むほど美しい。何事も、美しいものに近づくときは注意した方がいい(笑)。特徴は、三枚に別れた葉と赤い葉柄である。

ハクウンボク

庭にハクウンボクの花が散っていた。この木は、小屋のすぐ脇にあるのだが、屋根よりずうっと背が高いので地面に花が落ちていないと開花したのに気がつかない。群がって咲く白い花を白い雲に見た立てて、「白雲木」という立派な名前をもらっている。野山で咲く樹木では、一、二を争う美しさだ。花を楽しみに植えたのだが、高く育ちすぎて鑑賞できるのは落ちた花がらだけ。ハクウンボクは、エゴノキの仲間だからよく似ている。

八角連の葉に積もった白雲木の花