板谷波山展にて

 いま、板谷波山の生誕150年を記念して、筑西市の『しもだて美術館』、『板谷波山記念館』及び『廣澤美術館』の三箇所で、彼の代表作を一堂に集めて展示している。近くに用事があったので、帰りに見て来た。

 やはり、板谷波山の作品は素晴らしい。それに、彼の生き方もカッコいい!
これまでも彼の陶芸作品はいくつか見たことがあったが、国指定重要文化財の「葆光彩磁珍果文花瓶」をはじめ「彩磁延寿文花瓶」(出光美術館蔵)など、初めて目にするものが多数が展示されていて圧倒された。彼独特の「葆光釉」の掛かった作品などは、彼が理想とする極楽世界を薄衣を透かして眺めているようだった。絵柄の葉っぱや花弁などが、実に生き生きと正確に描かれている。一つの壺をいつまで眺めていても飽きることがない。そんなのが何十点も展示されている。

 鑑賞しているうちに、すっかり疲れてしまった。次に行った『板谷波山記念館』では、ちょうど、波山が地元下館のお年寄りに贈呈した「鳩杖」が多数展示されていた。そのうちの一本を借りて突いてみた。金属製の鳩の背中が、手のひらにスッポリ収まって心地よい。すっかり気に入って、冗談で、係員に「一本売ってくれないか」と聞いたら、係員は笑いながら「販売はしないが、稀にオークションに出ることがある」という。大体、一本70万円ほどの値段が付くそうだ。

 これほどの板谷波山の作品を一度に鑑賞できる機会は、もう、二度と無いだろう。この企画展は、6月19日(日)まで開催しているから、まだの人はぜひ見ておくべきだろう。近くに、これほどの芸術家が生まれていたことを知るためにも。

「しもだて美術館」の空中回廊