読書

坐禅や仏典

 僕はよく仏教経典や仏教関係の本も読む。夜中に目が覚めて眠れないときなどは、いつも枕元に置いてある本から適当な箇所をひろい読みをする。すると、気持ちが安らかになって再び眠れる。不安に襲われたときや落ち込んだときなどは良く効く。中でも、最も愛読しているのは、澤木興道禅師の著作だ。彼の厳しい坐禅修行に基づいた経典解釈を読んでいると生きる力が湧いてくる。古風だが厳格な親父と一緒に暮らしているようなものだ。『禅談』や『観音教講話』、『証道歌を語る』は、決して手放せない。加えて、天台大師の『天台小止観』は、僕の坐禅の教科書だ。(23-6-11)

 

堀江敏幸

 僕の好きな現代の作家は堀江敏幸である。いつの間にか、彼の作品がこんなに集まってしまった。彼の繊細で知性に満ちた美しい文体がすっかり僕を虜にした。とりわけ、ある地方都市(架空の)を舞台に、そこで暮らす人々の日常を「端正」な言葉で綴った短編小説がたまらなく好きだ。もう、すっかり、僕は町の住人の一人になっている。(23-6-10)

 

漢詩 

 僕はベッドに潜り眠りこむ前に、漢詩を2、3読むのが習慣になっている。主に「寒山拾得」や「陶淵明」それに「陸放翁」などだが、たまには「三好達治」も読む。 読んでいて、中国史をほとんで知らない自分に呆れる。詩が詠まれた背景の社会情勢や人々の生活などをあまり理解していないのだ。もっと中国の歴史を勉強すれば、リアル感が増すように思えた。そこで、宮崎市定著の『中国史 上下』(岩波文庫版)を買った。先ほど届いたので、今から読み始める。 中国史を知ろうと思った理由は他にもある。最近、中華人民共和国の世界におけるプレゼンスが飛躍的に増大したことだ。今後、中国を中心とするアジア圏とアメリカを中心とする欧米圏が、覇権を争って、ますます激しく対峙するようになると思われる。アジア文化圏に位置する日本で暮らしている僕としては、もう一度、長大な中国の歴史を通観するのも意味があるだろうと思ったからだ。 昨夜から雨が降っている。落ち葉がしっとりと濡れている。こんな日は、静かに読書するのに相応しい。(21-12-08)

          燈火
  書は一巻 淵明集
  果は一顆 百目柿
  客舎の夜半の静物を
  馬追のきてめぐるかな 
     (三好達治)

 

 

珈琲の本 

 コーヒーの楽しみは飲むばかりではない。豆の選択、焙煎、そして抽出と様々な段階で楽しみがある。その中の一つに、コーヒーに関する本を読んで、いろいろな知識を知る楽しみもある。僕は、これまでに何冊もコーヒーの本を読んできたが、結局、今のところ、この5冊に絞られた。これらの本から多くを学ばさせてもらった。と言うより、片手にカップを持って、漫然とページをめくっていると。これが至福の時だとさえ思えるのである。外国の美しいコーヒー農園や美味しそうに注がれたコーヒーカップの写真を眺めているだけでいい。抽出方法の丁寧な解説を読んでいると、次は僕も特別に美味しいコーヒーが淹れられると思えてくる。著者のコーヒーへの思いに共感し、文化や歴史を知って納得する。

 そこに、静かな音楽が流れていればなおさらいい。(22-07-06)